街角の小さな露店で、行き交う人を眺めている。
あるいは、大きなイベントの片隅の小さなブースで店番をしている。
そんな気持ちになりました。
ブログを書いている人ならたぶんご存じの、Google Analytics。自分のブログのどんなページがどんな風に読まれているかを見ることができる、Google提供のツールです。
その中に、「リアルタイム」という機能があります。
「リアルタイム」→「コンテンツ」を選ぶと、今その瞬間に、どのページが何人に読まれているかがわかるんです。
細々と続けているこのブログですが、なぜか先月後半から急にアクセスが倍増しました。Googleの検索アルゴリズムに何かあったのかどうか。
そのおかげで、以前は閑古鳥が鳴いていたこのブログにも、現在は、記事を読んでくれるお客さんが、途切れ途切れではありますが1人、また1人とぽつぽつ来てくれているようです。そんな様子が、上記のリアルタイム→コンテンツ画面をみているとよくわかります。
日本のあちこちで……。
流れていく画面を見ていると、不思議な気持ちになります。
日本のあちこちで、ソファのクッションがへたってウレタンを自分で交換できないか考えている人がいる。
日本のあちこちで、小学校卒業式の挨拶をどうしようかとパソコンに向かっているPTA会長さんがいる。
日本のあちこちで、学級懇談会の挨拶をどうしようかと困っている学年委員長さんがいる。
日本のあちこちで、小学校高学年男子に対する性教育をどうしたものか悩んでいるお母さん(お父さん?)がいる。
日本のあちこちで、しまむらのスクールシャツを買おうか考えている人がいる。
日本のあちこちで、ドアのレバーハンドル(ラッチ)が壊れて困っている人がいる。
日本のあちこちで、格安SIMの名義変更ができるかどうか調べている人がいる。
日本のあちこちで、業務スーパーのアジフライにしようかカキフライにしようか、あるいは麻婆豆腐はどうかと思案している人がいる。
日本のあちこちで、クイズ大会用の早押し機(早押しボタン)を自作したい人がいる。
……
村上春樹の小説に、同じような気持ちが書かれている一節があったと思い、探しました。
「誰がどのような理由で、このような文書の翻訳を(それも至急に)望んでいるのか見当もつかなかったからだ。おそらくは熊が川の前にたたずんで僕の翻訳を心待ちにしているのかもしれない。あるいは致死患者を前にした看護婦がひと言も口をきけぬまま待ち続けているのかもしれない。」(『1973年のピンボール』より)
広大無辺なインターネットの中で、たまたま何かの縁で小さな私のブースを訪れてくれた方。並んだ種々雑多な商品の中から、何か参考になることを見つけてもらえたら嬉しいです。
この作品が発表されたのは1980年。
私がこの文庫を買ったのは1983年。
……そして35年後の今。
随分遠くまで来てしまったと思う。