出身大学の学生からの質問に答えるシリーズです。
仕事の締切を守れなかったことはありますか? 守れなかった場合どのようなペナルティを受けますか,またどのように乗り切ったのでしょうか?
……締切は絶対です。
(このような質問が出てきたことにちょっとびっくり。教授に頼み込んでレポートの締切を延ばしてもらうようなわけにはいきません)
過去20年以上で、私が締切を守れなかったことは1回だけです。その1回も、同じ取引先から次々に仕事を頼まれスケジュールぎりぎりに詰め込んでいたときに風邪で寝込んでしまい、締切の数日前に、その仕事そのものをお返ししたというだけです(「数日前」という点が重要です。締切当日になって「できません」では取引先も対処のしようがありません)。それ以外は、風邪を引いてもインフルエンザになっても,ぎっくり腰でロクに歩けなくても、締切は守ってきました。もちろん、在宅仕事だから可能だったのは確かです。
どんな仕事でもそうだと思いますが、顧客から依頼を受けた仕事の締切を守れなかった場合、次から仕事が来なくなることを覚悟しなければなりません。締切はそれぐらい重要です。信用を積み重ねるには時間がかかりますが、なくすのは一瞬なのです。
締切を守るためには、スケジュールや作業量の管理が重要になります。仕事の依頼を受けたときは、作業量の見積、自分としての安全をみた余裕、先方の急ぎ具合などを勘案し、引き受けられるかどうかや納期を相談します。そのためには、自分の作業スピードも把握していなければなりません。
ところで、締切や分量の点で明らかに無理な仕事の依頼があった場合はどうすればいいでしょうか?
「できません」と単純に済ましてしまうのは禁物です。
ではどう言えばいいかというと、「納期を○日にしてもらえばできます」「分量を減らしてもらえばできます」「今やっている別の仕事を減らしてもらえばできます」というように、解決策を提示することです。最初から「できません」では、交渉の余地なく話がそこで終わってしまいます。そういうことばかり言っていると、仕事の打診自体だんだん減ってしまうのではないでしょうか。
……ただその一方で、無理めの仕事をつい勢いで引き受けてしまったり、取引先から強引に押し込まれてしまうことも,実際にはよくあります。「さすがに今回はちょっとヤバいかも……」と思ったこともたびたびでした。そういう場合も、後から作業量が減ったり、思ったより楽な内容だったり、スケジュールが「本当の限界」までは余裕があったりで切り抜けてこられたんですが,でも「追い込まれると仕事のペースが上がる」という経験をよくしたのも確かです。
パソコンに向かってハアハアゼイゼイ言いながら必死に作業をしていると、処理能力がだんだん上がってくるのです。人間、やはりギリギリまで追い込まれないとできないことがあるようです。しかも、そんなことを何回も繰り返していると、限界だと思っていたことが普通にできるようになる。
ブラック企業の言い草になってしまいそうで注意が必要ですが、「限界までやれば限界が上がる」というのは、私は一つの真実だと思っています。