たまたま,NHK Eテレ「ウワサの保護者会」の「キャリア教育 大事なことは?」の回を見ました。
番組内容は。
キャリア教育というと真っ先に思い浮かぶのが,中学生の職場体験。
「スーパーで中学生が自分なりに頑張っている様子を見た」
「希望外の体験先で得られたものがなかった」
といった体験談。
法政大学キャリアデザイン学部教授 児美川孝一郎教授の,
現在のキャリア教育の2つの課題:
- 「イベント型」になってしまっている。
- 「夢追い型」になってしまっている。
というコメント。
「単に仕事につくというだけでなく,自立できることを目指すのがキャリア教育では。」
→「では,自立させるために親ができることは?」
という流れで,出演保護者("ホゴシャーズ")の家庭の様子,体験談。
- アレルギーがある子どもが自分で将来それに対応できるように,一緒に調べたり,対策をとる親の姿を見せている。
- 外食などのアレルギーがすぐ検索できるようなネットサービスができないか考えている。
など。
最後に「"どういうことが好きか"といった自分の資質に気付かせて,将来の方向性を示しては」という児美川先生のコメントでまとめた感じでした。
感想その1:番組の性格として,雑談風は仕方ない?
番組名が「ウワサの保護者会」というぐらいですから,保護者同士の雑談・意見交換と,それによる親近感をねらった番組なのでしょう。でもその分,方向性がぼやけたり,内容が散漫になり情報密度が薄い気がします。
感想その2:キャリア教育に関する教授のコメントについて,もっと掘り下げてほしかった。
「イベント型」と「夢追い型」の問題をもっと掘り下げてほしかった。今のキャリア教育の問題は本当にここにあると思うからです。
イベント型:キャリア教育が,年1回,数日間の職場体験だけ,その時だけの「イベント」になってしまっていること。本来,組織の中で働く力は学校生活全般を通じて養い,関連づけることができるはず。
夢追い型:「自分が何になりたいか」から考えさせ,それを実現するにはどうすればよいかを考える形になっていること。つまり,明確に「なりたい職業」としてイメージできる職業(多くは専門職)以外には有効ではない。
夢追い型のキャリア教育で私が最も問題だと思うのは,自分が知らない職業につきたいと考えることは不可能だという点です。
自分が知らない選択肢を,候補として思い浮かべることはできません。
児美川先生の本,
にあった内容だと思いますが(本の現物は娘にあげてしまったので確認できません),たとえば「携帯電話」に関連する仕事にどんなものがあるかできるだけ考えてみる,というような授業を学校でぜひやってほしいものです。
いくら中学生でも,
- スマホを作る会社。
- スマホを売っている販売店。
- ドコモやau,ソフトバンクなどの通信会社。
程度しか思い浮かばないとしたらがっかりです。
- 半導体原料になる工業用シリコン精錬のための珪石を採掘する会社,とか
- 携帯基地局を設置するため工事しているときの交通整理の人,とか
これでもか!とひねったものを連想ゲームのように考えてみてほしいものです。
少し考えればいくらでも出てくるでしょう。
- スマホケースにイラストを描いているイラストレーターとか,
- 通信の暗号方式について研究している情報科学研究者とか,
- スマホ本体やカバーの試作品や金型を作っている小さな町工場とか,
- 基板や組み立ての工場の食堂のおばちゃんとか,
- 回収した携帯・スマホからオリンピックのメダルを作ろうとしているJOC・東京都(かな?)の担当者とか。
考えているうちに,そういう人たちがどんな会社・職場でどんな風に働いているのか,世の中がどんな仕組みでどんな風に動いているのか,興味がわいてきたらしめたものです。
番組の再放送は2018年11月3日(土)。興味のある方はどうぞ。