先日、こんな記事を読みました。
重要なテーマが毎回わかりやすくまとめられているknockout_さんのブログです。
学校と「地域」の関係について,私が半径数百メートルの経験から感じたことを書いてみます。
「地域」がキーワード。
私が小学校PTAにかかわっていた約10年前からすでに、「地域」は教育現場でのキーワードになっていました。
地域の人材、地域の資源、地域との協働、……。
わかるようでわからない「地域」という言葉。
具体的には何を指しているんでしょう?
地域=地域住民?
当然,「地域」は「地域の住民」を指しているでしょう。
しかし,学校が学区内の住民ひとりひとりに直接アプローチすることはできません。
ですから当然,地域住民で構成されている団体を経由して,地域住民に働きかけることになります。
地域住民の団体。
地域の住民で構成されている団体とは,つまり自治会・町会です。それ以外にも,商業地域なら商工会・商店会もあるかもしれません。農業や漁業などが盛んな地域だとそういう業界の団体もあるんでしょうか。
私が住んでいる地域は基本的に住宅地なので,地域とはすなわち自治会です。それ以外に,消防団・民生委員・子ども会・老人会・地域包括支援センターなど行政の管轄が違うさまざまな組織・団体が,自治会を中心にまとまっています。
コミュニティ・スクールとは。
コミュニティ・スクールについては,以前も書きました。
学校運営協議会制度が,別名としてコミュニティ・スクールと呼ばれています。
地域住民が学校の運営方針を承認し,意見を述べ,教員人事についても意見を述べることができるのが,学校運営協議会と呼ばれる組織。
教育委員会(というよりその行政部門である教育委員会事務局)が全て取り仕切ってきた学校運営に「地域」の意見を取り入れようということですが,つまりは「おらが村の学校」という意識で学校に協力してもらおうということでしょう。
学校運営協議会制度の問題点。
この学校運営協議会制度ですが,いろいろ問題が生じるのではないか,あるいは理念と現実に差が出るのではないかと思います。
繰り返しになりますが,私の半径数百メートル程度の経験から,予想されることをいくつか書いてみます。
委員は誰か。
形式的な任命は教育委員会が行うとしても,実際の人選は学校自体=校長自身が行うことになるはず。 そこに校長の意向が反映されるのではないか(ただし校長はすぐ異動しますが)。そして地域の候補者は地域団体の代表者になるはず。自ずとメンバーは決まってしまいます。
委員は教育の素人。
そして,任命された委員は教育の素人です。素人が,学校の教育方針に対してどの程度有効な意見を述べることができるでしょうか。
パワーバランス。
学校運営というと,校長の独断的運営が問題になる場合もあります(今回の泰明小学校のアルマーニ制服の件は,そういう面もあったのでしょう)。
しかし現在,学校は,さまざまな面で地域諸団体の協力が得られないと困る状況にあります(児童の安全確保,各種行事への協力など)。
私の周囲では,校長は3年程度で異動し,地域との窓口になる副校長は2~5年程度で異動します。その結果,地域との長期的な関係作りや学校運営の長期的な方針作りは難しい状況にあります。
一方,地域諸団体のメンバーは高齢化が進み,役職は固定化傾向。顔ぶれは10年単位のレベルで徐々に入れ替わる程度でしかありません。
このような状況下では,むしろ地域の発言力が学校に比べて強くなりすぎる可能性も考えられます。
縦割り行政の弊害。
学校運営協議会制度は,文部科学省の施策です。
ところが,自治会は自治体のまちづくり部門の所管。教育委員会から直接、自治会に小学校への協力をお願いしてくれるわけではありません。
PTAは任意団体ではありますが、教育委員会の生涯学習を担当する部門が所管です。
地域の子ども会は、児童福祉関連部門の管轄。
文科省→教育委員会がいくら一生懸命「地域の協力を」と言っても、それを実際に調整するのは現場の学校の役目になります。
学校は教育委員会の方針には従わなければなりません。
しかし,自治会・地域諸団体や,学校と自治会を仲立ちする役目が求められるPTAは,教育委員会の指揮命令下にはありません。とは言うものの,学校に協力しないわけにはいかない。
かくして,学校とPTAや地域諸団体が,既存制度との整合性も考えながら組織や予算をつぎはぎし,やりくりして,体裁をとりつくろうレベルでまずは精一杯となることが,十分予想されます。
Photo by 写真素材 足成
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「地域」という言葉を素直に受け取ることができない程度には,少々くたびれてしまいました。ブログ記事にしようと思っても,なかなか考えがまとまりません。