以前に,「投資を始めるなら,まず資産が減ることに慣れる必要がある」と書きました。
でも実は,かなりの日本人が,価値が下がるかもしれない資産をすでに買っているんです。
かなりの日本人が投資している,「価値が下がるかもしれない資産」とは。
それは不動産です。つまり,家。
土地や建物,マンションなどの不動産は,価値が大きく変動します。
でもそれがわかりにくいから,そういう意識がない。
日経平均株価のように毎日ニュースで放送されるわけではありませんからね。
それに,「住むところは必要」なのは当然ですし,「夢のマイホーム」みたいな漠然としたイメージもある。「みんな買っている」「そういうものだ」という意識も。
だから,価値が大きく変動することをあまり意識せずに買っている人が多いんです。
ローン完済時に値下がりしていたら?
「持ち家か賃貸か」という,決着のつかない論争があります。
持ち家派の主張の1つが,「家賃を払っても何も残らないが,持ち家なら家が残る」というもの。
たしかに,ローン完済後は土地も建物も,あるいはマンションも,自分のモノになります。
しかし,例えば3500万円の物件を頭金500万円,ローン3000万円で購入し,住宅金融支援機構のフラット35で25年間かけて返済する場合について考えてみるとどうでしょうか(適当に設定した条件です)。金利は全期間固定で1.12%(!!今はそんなに低いのか……)。
そのシミュレーションだと,総返済額は3441万円になります。
3500万円の物件を,25年後に計4000万円で自分のモノにできるわけです。
でもそれは25年後。そのとき,その家は4000万円の価値があるでしょうか?
そうではないんです。
一戸建ての場合,建物の価値はゼロ。
土地付き一戸建てなら,建築後25年経過した家の価値はほぼゼロでしょう。もちろん手入れしながら住み続けることはできますが,家を売ろうとしたときの価値としては,土地の値段しかつきません。
しかも,その土地の値段も,下がっているかもしれません。
土地2000万+建物1500万=3500万の物件なら,25年後に土地が値下がりしていないとしても2000万円の価値。土地が値下がりし,1500万とか1000万の価値しかないかもしれません。4000万円支払って,その程度の価値しか残らないとしたら?
マンションの場合も同様でしょう。25年後のその物件にどの程度の価値があるか。その家を売ったとしていくら手に入るかは,わからないのではないでしょうか?
それだけ価値が変動するものを買っているんだ,という意識が必要。
土地の値段が右方上がりに上がると思えた時代は,とっくに過去のものになりました。
土地の値段が将来どうなるかはわかりません。高齢化や人口減少を考えると値下がりすると考える方が妥当でしょう。土地だけでなくマンションの価格も下がるでしょう。そういう時代だという意識が必要です。建物の価値はもともと年数とともに下がるものであり,余程の増改築やリフォームをしない限り,上がることはありません。
終身雇用が怪しくなっている現在です。そういう点から,25年とか30年とか35年の長期にわたるローンを組むことも現実的ではありません。
Photo by 写真素材 足成