今朝のNHKおはよう日本で、映画『8年越しの花嫁』と『彼女が目覚めるその日まで』が紹介されていました。
原作を以前読んだことがあり、「こんな病気があるのか!」と驚いた憶えがあります。
女性が突然発症した病気は、抗NMDA受容体脳炎。10年前までは原因不明だった病気です。
※上記NHKサイトでは「病気だとされていませんでした」 という表記になっていますが、この表現だと誤解を招くこともあるのでは? 「それまで原因不明だったのが、原因がわかった」と言った方がいいのでは。
この病気は、脳の神経細胞表面にあるNMDA型受容体を、自分自身の抗体が攻撃してしまうことによるとされています。NMDA型受容体は、神経細胞間の情報伝達に必要な、"情報を受け取る部分"。「カギとカギ穴」の関係で言えば、カギ穴に相当します。そこが攻撃されると、神経細胞どうしの情報のやりとりがうまくいかなくなってしまうのです。
それによって幻覚や錯乱、痙攣など激烈な症状が現れ、昏睡状態に。
映画「エクソシスト」のモデルの女の子も、この疾患だったのではと言われています。
体の他の部位の腫瘍(卵巣腫瘍など)との関連性が多いことがわかり、その後は治療成績も改善されているとか。
以前、NHKの「総合診療医 ドクターG」でも、その症例が取り上げられていました。
脳の驚くべき回復力、そして当然ながら家族の献身的な介護。
映画を見たら泣いちゃいそうです。
医学の進歩により、それまでは原因不明だったり別の病気とされていたものが治るようになってきたとすれば、すばらしいことです。
目に見えにくい障害、「高次脳機能障害」への理解ももっと必要でしょう。
そしてどうか、高齢の先生方も新しい知識を取り入れていっていただきたいものです。
(開業医の中に、ごく一部、日常の診療で首をかしげるようなことをおっしゃる先生もいらっしゃるようなので……)
※原題は「Brain on Fire」ですが、fireとは「燃やす、燃える」という普通の意味のほかに、神経細胞が電気的に興奮した状態も表します。脳の暴走状態を、fireという単語に込めているのでしょう。