タイトルのように、"書名を書き切れない本" を読みました。
『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便を取り入れてみてはどうですか? ~ 不便益という発想』川上浩司 著(インプレス、1,500円+税)
です。
不便益という発想~ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?(しごとのわ)
- 作者: 川上浩司
- 出版社/メーカー: インプレス
- 発売日: 2017/03/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者は京都大学デザイン学ユニット特定教授。専門はシステム工学とのことです。
「便利」と「不便」、「益」と「害」。
「物理的労力(時間を含む)がかかるもの」、そして「心理的労力がかかるもの」が、一般的には不便と考えられます。でもそれは状況によって変わる。
便利なものが必ずしも有益とは言えない場合や、不便なものが必ずしも有害とは言えない場合もあるんです。
本書では、そのようなさまざまな例が挙げられています。
目的は1つではない。
つまるところ、本書の内容は
- 労力を減らし、かかる時間を短くし、知的労力が少なくて済むようにすることが、有益であるとは限らない。
- そのような「便利」が「有益」かどうかは、状況=目的によって変わる。
ということを再認識してはどうか。
という主張に尽きるように思います。
安全については議論がありそう。
ただし、本書の中で安全に関する例がいくつか出てきます。
「ぶつかりそうになったら自動で停まってくれる車に乗っていれば、居眠りしたくなりそうですよね。」という記述や、あえてバリアを残した老人福祉施設など。
こと安全がかかわってくる部分では、議論があるのではないかと感じました。
例えば車の場合。仮に居眠りしても、確実に停止するのならそれでいいのではないかという考え方も十分ありえそうです。
バイクに乗っていた頃のこと。
不便というと、私は必ずバイクのことを思い出します。
最近は全く売れなくなったというバイク。私が大学生の頃の販売台数がピークでした。
バイクは、乗り物としては、ありえないほど不便です。
- 夏は暑く冬は寒い。
- 荷物が積めない。
- 雨で濡れる。
- 転倒の危険がつきまとう。
- 簡単な事故でも、ほとんどの場合どこかしらケガをする。
- 体力が必要。
- 服が汚れる。髪が乱れる。
それなのに乗る人がいるのはなぜか。
それは、バイクは単なる「目的地まで移動する手段」や、「荷物や人を運ぶ手段」ではないからです。
バイクは、ただ単に、またがって自分で操作して走るためのもの。
なので、バイク乗りは、目的地まで行くために走るのではなく、ただ走るために、後づけで目的地を設定することがよくあります。順序が逆なんです。
そんなことを思うと。
目的の設定の仕方次第で、便利も不便も、有益も有害も変わるんだろうなあと、改めて思った本でした。
※どうでもいいことですが…
p4「喧々諤々」(けんけんがくがく):よくある誤用です。出版社はちゃんと校正したのでしょうか。
p15「遠い目をされます」:表現の意味がこの場面に合っていないような。「遠い目をする」は、「宇宙人を見るような目で見る」ではなく、遠い昔を思い出すような場面で使われる表現だと思います。
p33「富士山エレベーター」:このイラストはどう見てもエスカレーターですね…。