この間,とあるツイートを見て思い出しました。
「女子中学生の小さな大発見」という本があります
— M@婚活反省記 (@konkon06066) 2017年6月20日
理科の先生が学生の夏休みの宿題をまとめた本です。168gのスジコの中にイクラの粒が1505個あったとかイカ墨でお習字したとか小さい事が淡々とまとめられています
久々に読み返したら前書きに号泣。こんな先生に出会いたかったです pic.twitter.com/0WZIo3tAdB
この本,私も持っています。
『女子中学生の小さな大発見』清 邦彦 編著,新潮社。
理科の先生が,中学1年生の女子の「大発見」を書き連ねた本。
本文最初のページにある2つだけ,引用してみます。
- 「Tさんは妹の鼻に栓をし,目かくしをして,舌の上にソース,ポン酢,レモン汁などを乗せ,味は舌だけでなく目で見たり鼻でかいだりしてわかるものだということを調べました。ワサビを乗せたら怒っていました。」
- 「Oさんの実験によると,全店を13回すると「酔っ払ったおやじ状態」になり,後転では,10回でへなへなでぐにゃぐにゃになります。」
全ページこの調子で,女子中学生の楽しい発見が続いています。
自由研究とは。
今でも,夏休みの宿題で「自由研究」ってあるんでしょうか。
ウチの子どもらの通った小学校では,ありませんでした。中学校ではあったようですが,子どもらは適当に(!)ごまかしていたようです。
自由研究の宿題が出されると同時に,「子どもたちの理科研究」みたいな立派な小冊子が配られ,それには立派な研究が載っていたりします。
でもそれでは,「自由研究」のハードルは上がるばかりです。
仮説を立て,検証方法を考え,実験を行い,結果をまとめ,考察する。
…というのが「研究の基礎」でしょうが,そういう「形から入る」ことによって,そもそも「何を調べたいか」「何に疑問を持つか」「何を不思議だと思うか」「これをやったらどうなるか」といった好奇心がなくなってしまう面はあるはず。
著者の先生は,好奇心を育てて「とにかく何でもやってみる」ことを第一に,文字通り「自由に」取り組ませました。これは,理科の正しい出発点ではないかと思います。
限られた時間で何を指導するか。
本来は,「思いつきを試してみた」ところからさらに発展させて,本当の「研究」につなげていけるといいのでしょう。教科書的な知識とのつながりを考えたり,方法の問題を考えたり,予想された結果との違いがなぜかを考察したり。
でも小中学校の授業時間でそこまで丁寧にフォローするのが難しいとすれば,何かを捨てて何かを残さなければなりません。
- 出発点はともかく,研究の基礎的な方法論や考え方,ゴールを教える。
- 結果は二の次にして,出発点である好奇心を育てる。
のどちらかになってしまうのでしょう。中学1年生という状況を考え,著者の先生は後者を選んだのだと思います。
「その道」に進むのは,ごくごく一部。
どんな分野でも,将来「その道」に進むのはほんの一部です。理科なら研究者でしょうか。
ですから,小中学校のような初等教育の場合,「嫌いにさせない」「興味を持たせる」ことは大切なはず。教育によって理科嫌いや科学不信が増えれば,エセ科学にはまる大人が大量に生み出されるかもしれませんしね。
(体育も同様です。学校の体育や運動会が嫌だったために,体を動かすことが嫌いなままの大人は多いはず)
素朴な好奇心を大切にし,そこから「科学的な考え方」につなげるところまで,大切にしたいと思います。
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私も,子どもとの会話の中でなにか疑問が出てきたときに「どうなるんだろうねえ。それをいろいろやってみれば,もうそれで立派な自由研究になるよ」としょっちゅう話していました。子どもらは「またおとうさん言ってるよ~笑」というばかりで,実際にはやってくれませんでしたが。
私自身がもう少していねいにフォローしていたら,ちょっとは違ったかな?