昨日の記事を書いてから,考えました。
「もしかして,骨髄移植や骨髄バンクってあんまり知られてない?」
もうちょっと説明を書いておいた方がいいかもしれませんね。
骨髄ってどこにある?
そもそも,骨髄って何でしょう?
やりがちな間違いは,脊髄(せきずい)と混同してしまうこと。
脊髄は神経です。背骨の中を,脳からお尻まで通っています。
それに対して骨髄は,骨の中心部にある,スカスカのスポンジ状になっている部分です。
骨って,中心までみっちり硬いわけじゃないんですよ。
骨髄の働きは?
骨髄には造血幹細胞という特別な細胞が含まれていて,その細胞から血球(赤血球,白血球,血小板,リンパ球など)が作られています。「血球製造工場」のようなものです。
骨髄移植とは?
ざっくり言って,「血液のがん」に対する治療の最終手段です。
「がん」は体の細胞が無秩序に増殖してしまう病気ですが,「血液のがん」では,血液中の細胞,つまり血球が無秩序に増殖してしまいます。
それは,造血幹細胞が異常になってしまったからです。
そうなってしまったら,異常な造血幹細胞を排除しなければ正常な血球が作られません。そのためにいろいろな治療が行われますが,他の治療で効果がなかったときの最後の手段が,骨髄移植。
異常になってしまった患者さんの骨髄(造血幹細胞)を,他人の骨髄と「全とっかえ」するんです。
もう少し詳しく言うと,
- 強力な抗がん剤や放射線治療で,患者さんの骨髄を破壊する。→ 造血幹細胞を,異常なものも正常なものもひっくるめて全部死滅させるので,血球が作られなくなります。
- 提供された骨髄を患者さんに注入します。骨髄(造血幹細胞)は液状なので,点滴で投与します。「骨髄移植」とはいうものの,「手術で他人の臓器を埋め込む」イメージではありません。
- 移植された造血幹細胞が患者さんの体内で働き始めると正常な血球が作られ,回復につながります。
骨髄バンクとは?
「それで治療できるなら,血液のがんの患者さんをどんどんその方法で治療すれば」と思うかもしれませんが,そうはいきません。
適合する型,適合しない型があるんです。
ABO式血液型のように,患者さんと骨髄提供者の「型」が一致しないと移植はできません。一致しなければならない型が,「ヒト白血球抗原(HLA)」の型です。
ところが,ABO式血液型は4種類しかありませんが,HLA型は非常に種類が多く,非血縁者では数百人~数万人に1人しか一致しません。
そのため,「骨髄を提供してもいいよ」という人が自分のHLA型を登録しておくシステムが,「骨髄バンク」。骨髄移植が必要な患者さんが出たとき,日本骨髄バンクに問い合わせれば,HLA型が適合する提供者がいるかどうかがわかる仕組みです。
骨髄提供はどうやって?
提供の候補になったら,数段階の検査や,改めて同意を確認するステップがあります。
骨髄を採取する本番では,数日間の入院が必要。
全身麻酔して骨盤の骨(背中の,腰のあたり)に注射針を刺し,骨の中にある骨髄液を抜き取る方法で骨髄が採取されます。
全身麻酔ではありますが,手術(切開したり,骨の中心部分を取り出したり)するわけではありません。
最近では,末梢血幹細胞移植という方法が行われることもあります。
これは,普通は血液中に存在しない造血幹細胞を薬で血液中に増加させ,その状態で腕から連続的に採血しながら,造血幹細胞だけを分離,採取する(他の血液成分は体に戻す)方法です。
どちらの方法が用いられるかは患者さんの都合で決まりますが,提供者側で希望を伝えることもできます。
一歩踏み出してみては?
日本骨髄バンクのパンフレットに「次の方はドナー登録をご遠慮ください」とあるのは,以下の方だけです。
- 病気療養中または服薬中の方(特に気管支喘息,肝臓病,腎臓病,糖尿病など慢性疾患の方)
- 悪性腫瘍(がん),膠原病(慢性関節リウマチなど),自己免疫疾患,先天性心疾患,心筋梗塞,狭心症,脳卒中などの病歴がある方
- 悪性高熱症の場合は,本人またはご家族に病歴がある方
- 最高血圧が151以上または89以下の方,最低血圧が101以上の方
- 輸血を受けたことがある方,貧血の方,血液の病気の方
- ウイルス性肝炎,エイズ,梅毒,マラリアなどの感染症の病気の方
- 食事や薬等により呼吸困難などの症状が出たことがある方や,高度の発疹の既往がある方
- 過度の肥満の方(体重kg÷身長m÷身長mが30以上の方)
私も,偉そうなことを言える立場ではまったくありませんが,ほんのちょっとしたきっかけで今回登録しました。
上記に該当しない方は,ぜひ一歩踏み出してみてはどうでしょうか。
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