2016年12月24日21:00からNHK総合で放送されたNHKスペシャル、「私たちのこれから Our Future #長時間労働」を見ました。
会社員時代はサービス残業に追われ、脱サラしてフリーランスになってからは仕事をしつづけてきた身として、なんとも言えない複雑な気持ちになりました。
自分のやってきたことはやっぱり間違ってたのかなあと。
でも、私の場合はもう「出口戦略」を考える年代でもあるし、今からでもできることはあるかもしれない。
番組の要点。
残業時間を半減させたSCSKの取り組み。
上司の声かけやノー残業デーでは効果が上がらなかった。
- 残業が当然という社員の意識(提示までに終わらせるという意識の欠如、残業を重ねて成果を上げている社員が評価されていた)
- 残業代が生活費になっていた
→残業代10億円をボーナスに。残業を削減した部署は評価を上積み。
→考え方が変わった。「定時で終わらせる人間の方がかっこいい」というコメントも。
具体的には、作業工程を検証し、非効率さを排除。
以前は「納得するまでやっていた」、今は「有限の時間の中でいかに成果を出すか」に。
ただし、若手をどう育成するかは問題(まわり道をせず、徹底してつきつめるようなことをせず成長できるのか?)。
厚生労働省審議官岡崎淳一さん
「時間あたりの労働生産性をどうするかの問題」
ホワイトカラー、サービス業の労働生産性の低さが問題。
小室淑恵さんのコメント
「一社だけで取り組んでも、それを出し抜いて長時間労働で利益を上げる企業が出てくる。社会全体で取り組むことが必要」
「顧客からの不規則な要望」が問題。
残量ゼロを達成した福岡県の建設資材貸出会社。
- 無理な依頼は断る。
- 断れるように、大口顧客に依存するのではなく小口の取引先をたくさん確保。
残業ゼロを目指した理由:人材確保が目的
→残業ゼロを達成した結果、採用倍率は100倍以上になった。
「無制限のサービス競争」が問題。
- いいものを安く。そのためには過剰サービス・過剰品質のために安く働かせてもいいという発想が残っている。
- 経営者が交渉すべき。
- 全部やります、0円でもやりますという構造に問題がある。
法規制の議論。
勤務間インターバル制度。ヨーロッパでは20年以上前から導入されている。
最後にゲストがまとめコメント。
といった内容でした。
再放送があるのかどうか。NHKオンデマンドでないと見られないかもしれません。
番組をみて思ったこと。
- 電通事件の件。残業100時間超ばかりが取り上げられているけれど(そして数字なので論点としてわかりやすいけれど)、電通事件の本当の問題は、パワハラと、ネット広告部門特有の「無制限の対応」にあったんじゃないか。
- 長時間労働を規制すべきかどうかをスタジオの人たちに尋ねたとき、経営者の立場にある人たちが反対していたのが印象的。
規制されたら仕事が成り立たないという実感なのだろう。
でも、従業員、そして経営者自身の健康を守るために、そして人材確保のために、いやおうなく考えなければならないのではないか?
ブラック企業としてあれだけ叩かれたゼンショーは、ワンオペを解消し労働環境を改善した結果、業績が改善され社員も集まっていると聞いた。
長時間労働、有休がとれないといった企業は、人が採用できず存続できるかどうかの問題になるのでは。
- 零細フリーランスである自分は、「仕事を選べる」だろうか? いや、「できるかどうか」ではなく、やらなければいけないのだろう。
- 番組最後、三宅アナは「長時間労働はなんとか解消していってほしいですよね」とまとめに入ったが、ここにまず考え方の違いがあるのでは。大企業でも中小企業でも「長時間労働はやむを得ない」「長時間労働も場合によっては必要」と考えている人たちが一定数いる。そこをどうすべきかが問題。
- 番組最後のコメントで、
サントリーホールディングスの新浪社長
「健康経営を掲げベーシックな理念をしっかりしなきゃいけない」
→経営者がトップダウンでやるべきことですよね。
厚生労働省岡崎審議官
「作った法律は守ってもらわなればいけない」
→今の労働基準法は守られているんでしょうか? いま法律が守られていないのに、新しい法律は果たして守られるんでしょうか?
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