30年も前に卒業した出身大学から,進路研究の授業への協力依頼を受けました。大学1年生と修士1年生に卒業後の進路やさまざまな職業について考えさせ,出てきた疑問や知りたい内容に対して卒業生がメールで答えるというものです。
学生とメールをやりとりする過程でいろいろと文章を書きましたので,それをここにご紹介することにします。
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進路研究授業に参加する大学1年生・修士1年生へのメッセージ
仕事は人生の中の重要な部分を占めていますが、一口に仕事と言っても、大企業に勤めるか、公務員になるか、中小企業やベンチャー、NPOなどで働くか、はたまた自営業やフリーランスになるかで、キャリアの内容だけでなく、毎日の生活そのもの、ひいては人生が大きく異なってきます。進路研究の機会に、さまざまな職業そのものだけでなく、日々の生活や人生について、少し想像してみるのもいいかもしれません。
私が学部を卒業した当時と現在の社会情勢、就職状況は大きく異なっており、会社退職後にフリーとなった私が現在いる業界も、この仕事を始めた当時から現在までの間に大きく変化しました。未来がどうなるか確実なことは誰にもわかりませんが、不確実性がますます高まり変化のスピードが速まることは確かでしょう。どのような環境でどのような仕事をするにせよ、どこに出ても通用する自分の「売り」を如何に維持し、変化に柔軟に対応するかが、今後ますます重要になってくると思います。
皆さんも数年後までに自分の方向性を定めなければなりません。今のうちから折に触れて、自分自身の将来についてしっかり考えてください。
自己紹介を補足しておきます。
私は学生時代、サークルに所属することもなく、本を読んだりバイクで走り回る以外はのんびりダラダラと過ごしていました。授業にはちゃんと出ていたので単位は問題なく取れていたのですが、卒業研究は非常にいいかげんだったので、秋になって卒業できるかどうか不安になり、暗い気持ちで過ごしたことをよく憶えています。
進路についても、深く考えることはあまりしていませんでした。ほかに2つほど考えていた方向(大学の学部学科とは関係ありません)もありましたが、それらはあきらめ、流れで「普通に」就職したという感じです。当時はバブル景気の前夜、しかもインターネットが存在しない,のどかな時代。授業の成績だけはよかったせいか、あるいは外面だけはよかったせいか、内定を簡単に取ることができたのです。
そんな私と比べて、今の学生ははるかにまじめに勉強していると思います(もちろん、いろいろな面で厳しくなった時代背景もあると思います)。将来の進路についても、小・中学校の頃からのキャリア教育で「考えさせられてきた」のではないでしょうか。
私は、職業や進路について考える上で注意すべき点の1つに、「知らないものから選ぶことはできない」ことがあると思っています。例えば、小学生に「将来なりたい職業」を聞くと、先生、パティシェ、お花屋さん、医師、スポーツ選手……といったように、小学生が知っている範囲の職業しか出てきません。
思想家の東浩紀氏は『弱いつながり』という本の中で、"ネットで検索すればどんなことでも調べられる現代においても、検索ワード自体を知らなければ調べることはできない"という意味のことを言っています。
ネットの世界は広く開かれているように見えますが、入ってくる情報は自分の関心の範囲に限定されてしまいがちであり、存在すら知らないことについて知るためには、自分から,そのために何かのアクションを起こさなければならないのです。
1年生のみなさんは特に、この進路研究をきっかけにして、私だけでなく他の卒業生とのやりとりも参考にしたり、それ以外にも世の中のいろいろな方面に関心を持って、見聞を広めてください。
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最初のメールでは,上記のようなことを書きました。続きはまたの機会に。